FEATURE

INTERVIEW IN THE ATELIER
with TEPPEI KANEUJI
Artist

美術家 金氏徹平
「京都はオルタナティブ中のオルタナティヴ」


「発表する場がない」。金氏徹平さんは京都のアートシーンについてそう語ります。しかし、それは決してネガティブなことだけを意味しているわけではないから、ややこしい。このインタビューは嵐山の住宅街にある彼のアトリエにて。それにしても、ものすごい物量のアトリエ。掃除なんてきっと不可能だろう。そりゃ近所の小学生も怪訝な顔で覗くだろう。でも、ここから作品が生み出されている、と考えれば神聖な場所にも見えてくる。金氏徹平さんに京都とアートについておうかがいしましょう。


ーーここ数年、金氏さんは海外での活動も少なくないですが、あらためて外から見た京都ならではのアートシーンの特徴を挙げるなら?

まず現状の特徴としてはアーティストがたくさんいる場所、ということですね。日本の中では東京の次に多いんじゃないかな。でも東京ではない、というオルタナティヴ。日本も世界から見ると世界のオルタナティヴで、京都はさらにそのオルタナティヴ、かな。

ーーオルタナの極北ですね。

そういう部分で世界から認知はされているし、アジアのアートシーンを俯瞰すれば日本→京都という見え方もあって。それはダムタイプとかから始まった見え方だと思うんですけど。

ーーでは京都にアーティストが多いのはなぜだと考えます?

美大がたくさんあって、住みやすいので(卒業後も)残っている人が多いからかな。

ーー京都のアートシーンのダメなところは?

アーティストは多いけど、発表する場が少ないことですね。その問題はずっと以前からあって。京都に住んでいるけれどアウトプットは東京だったり海外だったり。アーティストの数に対してギャラリーが極端に少ないし、美術館も京セラ(美術館)の「東山キューブ」ができたのがやっとで。これまであの規模やロケーションで現代美術の若い作家を扱うところがなかったので。

ーーつまり商売としてはギャラリーが成り立たない?

よく言われるのはそういうことですね。観客が少ないということで。でも、それがまたオルタナティヴ度を高めている要素でもあって。

ーー発表の場がない、というフラストレーションが歪なエネルギーとなって?

鬱屈していくというか。でもそれによって想像力を膨らますことができたり、作品を見せるための工夫をするようになったり。

ーーそれはそれで悪くない部分もある、と。

あと(作品を展示しても)どうせ誰も見てないだろう、っていう感覚があって。

ーー諦め?

でもそれが意外に重要で。僕もその感覚は学生時代から思ってて。

ーーつまり?

何をやっても怖くないというか。

ーーやぶれかぶれの精神で?

東京だといろんな目があって、学生でも展示をすれば、いろんな人からいろんなことを言われたりする。お金になるとかならないとか、そんなこともあって、がんじがらめになってしまう。その良さもあるとは思うんですけどね。

ーーその点、京都のアーティストは悪い意味でも自由と?

相当自由。というか何も縛られてない。情報も入ってこないし知らずにいられる。もちろん悪い部分もあるんですけど、僕はそこは良い環境だと捉えてます。

ーーなるほど。アーティストが純粋培養されていく環境。

それは伝統的にあると思いますね。でも、“どうせ誰も見てない”って言っても、世界から見ると京都は認識はされているから、たまに海外のキュレーターも作品を見に来ている。だから、いろんなものをすっ飛ばして世界に出られる、という側面もあるんです。

ーー昔のボアダムズみたいに。大阪から世界へ、と。

まさにそう。


ーー金氏さんは京都市立芸術大の先生でもありますが、最近の学生の様子は?

優秀な学生に限って(制作を)辞めちゃう。アートじゃなくてもいいか、と思うみたいですね。

ーー学生の“アート”の捉え方が変わっているのかも、ですね。teamLab的なものやアニメだったり。

そういうところも含めるとアーティストは増えているのかもしれない。でもいわゆる純粋なアーティスト、という感じの人は減ってますね。アーティスト志望の学生はほとんどいない。卒業してもダラダラと制作を続ける自称アーティストも僕らの頃は基本だったんですけど、それもない。とりあえず就職する。昔と比べて就職口もあったりしますからね。

ーーほかに現在の美大の特徴を挙げるならどんなところでしょう?

京都に限ったことじゃないかもですけど、うちは学生の9割が女子、ということですね。でもそこでなにかムーブメントが起こっているわけじゃない。海外のキュレーターなどにそのことを話すとみんな興味を持つんですけど、べつにそこでなにかが起こっているわけでもない。

ーー金氏先生がプロデューサーとなってAKB的なグループを作るとか。

AKB的かはわかりませんし、僕は関係なくていいんですけど、何か同世代で共有できるコンセプトやアティテュードみたいなものは無いのか、とけしかけたりはしてるんですけどね…今後何か出てきたら面白いんですけど。

ーー今、京都ではアーティストグループのhyslomやTHE COPY TRAVELERSなどがいます。コレクティブに未来の可能性が?

うーん、流行りというのもあるかもしれないですけど。Chim↑Pomやcontact GONZO以降だと思うんですけど、たしかにいろいろと出てきていますね。

ーー(金氏徹平もメンバーだったアーティストグループの)ハジメテンは?

早過ぎましたね。早過ぎて注目される前に崩壊しました。そろそろ再評価があってもいいと思うけど。今、見てもユニークなコレクティブだったと思いますけどね。でもまぁ、ああいうのは2、3年で終わるのが正解だと思います。


ーーちょっと話を戻すと、京都ってアーティストが制作しやすい物理的な環境は整っていると思います?

うーん、個人的に思えば、微妙かもしれないですね。東京の郊外の方が広くて家賃が安いところがあるかもしれない。(京都は)そこまで安いわけではないし。まぁ、中途半端。

ーー全体的に大きな作品が少なくなっていると聞きます。金氏さんは大きな作品も制作されていますよね?

僕の場合は大学を使いながら。

ーー役得ですね。大学をアトリエ代わりに。

でも制作してると、学生に“これ、どけてください”とか普通に言われますけどね。

ーー2023年に京都市立芸大が西京区から京都駅近くの崇仁地区に移転しますが、それを機に京都のアートが大きく変わるかもしれない?

今と比べてアクセスも良いので、海外からのお客さんも期待できるし、移転する場所にいろんな施設ができるので拠点になりそうな気がします。新しい文化ができる気がします。

ーー寂しい気持ちは?

ぜんぜんないですね。今の場所での特徴を生かして、十分成果をあげたと思います。あそこからたくさんアーティストも出ましたので。何にしてもずっと同じところだと危険な気がするので、たまに移転するのが芸術大学としてはいいことだと思います。それができるのも京都の良いところなのかな?

ーー近くでクマも出たそうですしね。では最後に京都のアートフェスティバルについてどう考えます?

KEX(『KYOTO EXPERIMENT』)の貢献度はすごく高いと思いますね。ちょっとパフォーマンス志向のアーティストが増えているのもその影響だと思います。ヨーロッパ的というか、その雰囲気があると思います。

ーー公的な予算で運営されているところとか?

街全体で開催するところとか。

ーーちなみに、なんですが海外での展覧会では作風が京都っぽいとか言われたり、ちょっと意識してしまったりすることって?

ないですね。僕はそういう部分を求められないタイプっていうのもあるし。求められるアーティストもいるとは思うんですけど。でも、そういえば昔、森村(泰昌)さんに“金氏くんはむちゃくちゃ(伊藤)若冲だ”と言われました。

ーーむちゃくちゃ若冲、っていい響き。でもどこがですかね?

うーん、いろんなものを集めたり、自然現象を取り入れたりするところとかかな。



金氏徹平 TEPPEI KANEUJI
美術家・彫刻家。身のまわりの事物を素材に部分を切り抜き繋ぎ合わせることで、既存の文脈を読み替えるコラージュ的手法を用いて作品を制作。近年は舞台作品も制作している。1978年生まれ、京都在住。
https://teppeikaneuji.site


写真 塙新平
http://shimpeihanawa.jp

※このインタビューは2020年4月に雑誌『カジカジ』京都アート特集の際に行ったものです。9月に終了した『カジカジonline』の許可を得て掲載しています。