FEATURE
INTERVIEW with NORIKO TUJIKO
at McDonald’s

Artist/Film director

アーティスト/映画監督 ツジコノリコ
「成長、成長。いろいろ成長」


Happeningsとは旧知の仲。ツジコノリコさんには竹村延和との共作、ユニットTNTNでのコラボレーション作品(まだまだ発売中)、そしてコンサートでお世話になりっぱなしです。現在、夏のバカンスで帰国中の彼女に近況をうかがってみましょう。考えてみれば拠点をフランスに移し早20年、近年は音楽活動のみならず、映画監督としても活動するノリコさん。のんびりしているようでいつだって精力的。最近のニュースは?



ーーここ数年、住んでいるのはフランスのサンリスですね。


サンリスの近くでシャンティイ城のそば。パリから早い電車で30分くらい。郊外というより、めっちゃ森。だから自転車にも乗れるようになったし。最近、車の免許も取ったし。


ーー免許取るのは苦労しました?

いきなり路上を走るからめっちゃ怖かった。ドライビングスクールの中で、とかじゃなく。でも自分がこれまでどれだけ注意力散漫で、ぼんやりしてたかをあらためて気付かされたわー。

ーー免許は子どもの送り迎えのためとか?


そう。幼稚園の。ちょっと遠い幼稚園だから、これは取るしかないって。成長、成長。いろいろ成長。


ーー最近、ライブは?


たまにしてる。

ーー作品のリリースも控えていますね。

Mego(ウィーンのレーベル)から。

ーーEditions Megoからはアルバム『My Ghost Come Back』(2014年)以来ですね。

Megoのピーター(・レーバーグ)に3時間分くらいの音源を送ってて。ピーターから“長いから(レコードでなく)CDでリリースしよう”って連絡をもらってたけど、私、返事してなくて…。

ーーぼんやりしてて?

そう。出そう、って返事した日に彼が亡くなって。それが去年の7月。今年(2022年)の秋には出るんじゃないかな。ピーターが死んだからレーベルは閉じてしまうけど、計画していたものはリリースされるみたい。



ーーそういえばもうすぐサントラもリリースされますね。2020年に公開されたイギリス映画『Surge』。これはスリラー?

トレイラーにあるようなエンタメ感はそこまでないけど面白いよ。有名な俳優さんも出てる(主演は『007』などに出演しているベン・ウィショー)。これは『Kuro』(ツジコが監督・音楽を手掛けた映画作品)を聴いた監督からオファーをもらって。『Kuro』のおかげ。『Kuro』はバジェットが無いから自分で音楽をやっただけで。最近は映画音楽の世界では職業作曲家だけじゃなくて、アーティストに音楽を頼むのが最近増えてるみたい。


ーー『Surge』のサントラはイギリスのレーベルConstractiveからリリースです。最近ではヴラディスラフ・ディレイと渡邊琢磨(Delay × Takuma)のコラボレーションを発表するなど挑戦的。


SN Variationsが遊びでやってたサブレーベルみたいだけど、最近は本気で。リリースも増えてるみたい。いいレーベル。あと、サントラは中国の新人監督の映画をやると思う。女の子の監督。


ーーサントラの制作は自分のスタイルに合っている?


合ってると思う。家でひとりで作ってる方が好きやから。(ライブで)歌うのは好きやけど、家で作ってる方が楽。そんなに(サントラは)たくさんやってないからまだ分からないけど、めっちゃ楽しい。映画好きやし。


ーー自分でも監督してるくらいですしね。

これまで歌詞を書く時も、ちょっぴりストーリーを考えて書いたりするから。サントラは何の苦もない。うん。楽。


ーーサントラだけでなく、歌を中心とした作品は?

最近は歌の無いものが多いけど、歌ものみたいな音楽も作ってて。めっちゃアジアなレーベルとかからリリースしてみたい。88Risingみたいな? なんか面白いレーベル見つけたけど、なんやったかな。まぁ、歌ものも楽しいからやってる。声を使いたくなる。


ーー歌う、というより自分の声を使う、という感じ?

そう。メロディを使うときは声が良いかなって思ったり。

ーー制作は子育ての合間に行っているんですよね? 大忙し。

そうそう。毎日作ってる。めっちゃ働きもの。

ーー音楽活動はもう20年以上になりますが、新しいアイデアが尽きることはない?

ないない。もう、ますます。最近はより楽しい。なんでやろ? 歳かな? 歳とってくると、いろいろ楽しい。周りはどう思ってるか分からんけど、自分は楽しい。

ーーそりゃいいですね。

あと今、また映画(のストーリー)も書いてて。それは、また(『Kuro』を共作した)ジョージ(Joji Koyama)くんと。お互い、子どもが熱出したとかでストップしたりするけど。今度はすごいドラマ。日本を舞台にしたリアルなドラマ。とりあえず書いてみて、それが実現すればいいけど。日本でも東京というより、そこまで都会じゃない街を想定してて。日本に住んでる日本人じゃない人のセカンドジェネレーションの物語みたいな。


ーー音楽に映画に、創作は止まらないですね。

めっちゃ家庭染みた例えだけど、食器洗い機にお皿を空き好きで入れて、しっかりキレイにする人もいるけど、私はめちゃめちゃ詰め込んで洗うタイプ。キレイになってない部分もちょっとあるけど。まぁ、それでいいかと思うタイプ。オプティマイズ。詰め込み。


ーーぼんやりしているようで生き急いでいる?

しっかり考えてゆっくり作ったら、もうちょっと良いものができるかもしれない。けど、それができないことも分かってる。

ーー自分ひとりで制作していると、いろいろと逡巡して終わりがない作業のような気も。いかがです?

いやいや、終わる終わる。すぐ終わる。それが良い結果を生んでいない、ということも知ってる。けど、どうしても詰め込むし、すぐ終わる(笑)

ーー今後、例えば大きな会場でコンサートをやってみたい、というような野望は?

ないない。誰かの家に行って歌うくらいが楽しい。

ーー以前、日本で人の家を巡る出前コンサートをやってましたね。

あれ、楽しかったー。またやりたいわ。



2022年7月27日、大阪・上本町のマクドナルドにて。



ツジコノリコ Noriko Tujiko
フランス在住の音楽家、映画監督。現在までにEditions Mego, Tomlab, Fat Cat, Room40などからアルバムをリリース。2003年、アルバム『ハードにさせて』はPrix Ars Electronicaで特別賞を受賞。『Sonar Festival』等の音楽祭にも出演。映画、アニメーション、ダンス、インスタレーション作品への音楽提供や音楽家ピーター・レーバーグ、竹村延和、ローレンス・イングリッシュとのコラボレーションも。2005年より映画制作を開始、『砂、そしてミニハワイ』(2005年)、『SUN』(2008年)はパリのカルティエ財団美術館をはじめ、国際的に上映される。3作目となる監督作(Joji Koyamaとの共作)『Kuro』はフランスはもとより、アメリカや日本等で公開。そのサウンドトラックは2019年にベルリンのレーベルPAN内のENTOPIAからリリース。同年6月には竹村延和とのユニットTNTNのシングルをHappeningsより発表。2022年10月には映画『Surge』のサウンドトラックがConstractiveよりリリースされる予定。
http://www.tujikonoriko.com


Tujiko Noriko & Paul Davies OST『Surge』
https://snvariations.bandcamp.com/album/surge-original-soundtrack




撮影 佐伯慎亮
http://www.saekishinryo.com